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開催事例
2013.02.28
温泉ライダーin加賀温泉郷2012片山津
2012 年5 月、石川県加賀市片山津温泉で、自転車耐久レース『温泉ライダーin 加賀温泉郷2012 片山津』が開催された。

主催:温泉ライダーin 加賀温泉郷実行委員会
共催:加賀市、加賀まれびと交流協議会、一般社団法人ウィズスポ
後援:石川県、NPO 自転車活用推進研究会など
競技:柴山潟周辺2.4 ㎞を周回する3時間耐久レース(エンデューロ)。 
    ママチャリ、パフォーマンス部門など含め参加者およそ600 名。 

今回は、同イベントの発起人である市民団体・加賀まれびと交流協議会(会員数33 名)の皆様に、イベント開催に至る経緯とウィズスポが果たした役割、イベント成果、今後の展望などについて詳しくうかがった。



【加賀市について】
人口およそ7 万人、面積約306 平方キロメートル。石川県南西部に、日本海と白山連峰に挟まれるように位置している。主な産業は観光業、自動車部品製造業。九谷焼、山中漆器などの伝統工芸品でも知られている。


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もくじ 
  1 :北陸新幹線開業を目前にひかえ、加賀市に必要な三つのもの
  2 :集客力の高い自転車レースで、リピーター滞在型の観光都市をめざす
  3 :競技運営、安全管理、事務局業務は、シロウトだけでは非常に厳しい
  4 :ウィズスポは共催団体として、経済的リスクも共有してくれた
  5 :栃木県でも『温泉ライダー』開催―東京のイベント会社で関東圏の誘客を図る
  6 :開催プロセスにおいて市民を巻き込み、地域おこしにつながる仕掛け



  1 北陸新幹線開業を目前にひかえ、加賀市に必要な三つのもの

―  はじめに、加賀まれびと交流協議会についてご紹介ください。 

加賀まれびと交流協議会は、石川県加賀市にある市民団体です。 設立は2011年5月、メンバーは市内全域から集まった製造業、観光業、飲食業、小売店、公務員などさまざまです。 2015年の北陸新幹線開業に向け「自転車のまち加賀」をテーマに地域おこしをしています。


「自転車のまち加賀」サイクル・ツーリズム戦略


「協議会の活動を通して
地域を担う若い世代が
育っています。」
(加賀まれびと協議会会長
実行委員長 吉田利久様)
「自転車のまち加賀」についてご説明します。 加賀市は自転車にゆかりのあるまちです。1915年、加賀の伝統工芸・山中漆器の技法をもとに初の国産金属製リム(自転車の車輪部品)の製造工場が加賀市に誕生しました。自転車部品産業はオートバイ、自動車部品製造へと姿を変え、今日の加賀市の製造業の基盤となっています。 また日本海と白山連峰の間に位置する加賀市は自然の眺望に恵まれています。加賀温泉と総称される山代・山中・片山津の三温泉地などグルメ、観光スポットが点在しており、サイクル・ツーリズムに適しています。



  『温泉ライダーin加賀温泉郷』とは、どのようなイベントですか。

『温泉ライダーin加賀温泉郷』は温泉と自転車を結びつけイベントを開催することにより、自転車の愛好家に自転車の故郷・加賀温泉郷を知っていただこうとする取り組みです。将来的には三箇所ある温泉街の公道をコースにして開催したいと思っています。 競技形態は、周回型耐久レース(エンデューロ)です。男子・女子ソロ、男子・男女混成チーム、ママチャリ、パフォーマンスの6部門があり、自転車の熟練者から初心者まで楽しめるレースです。

参加記念品は、温泉地らしく入浴グッズ(湯桶)と、レース前日・当日に何度でも無料で温泉に入れる入浴手形です。 レース前日のプレイベント、ご当地グルメと物産のブース出展、温泉宿泊など、競技に参加しない人にもゆっくりと加賀市を楽しんでいただく企画です。


一度聞いたら忘れられない、ユニークなネーミング



  なぜ『温泉ライダーin加賀温泉郷』を開催しようと思ったのですか。 

2015年4月の北陸新幹線開業を目前にひかえ、加賀市に必要な三つのものが、自転車レースイベントによって得られると考えたからです。

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加賀市に必要な三つのもの
point 1 ) 「加賀市にしかない」もの
point 2 ) ホスピタリティの向上
point 3 ) 市民の一体感
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point 1 )「加賀市にしかない」もの

日本海側ならではの美味しい食べ物や美しい景色は、石川県内各地にあります。加賀市には、北陸新幹線で関東からお越しになったお客様に、加賀市まで足をのばしていただくための観光の目玉と呼べるものがありませんでした。
加賀市はいままで、宿泊施設の魅力による集客が主流でした。団体客が大型観光バスで乗りつけた温泉旅館に一泊二日して、翌朝バスで帰っていくスタイルです。
北陸新幹線開業で、家族や友人など小グループの旅行客が増えると見込まれています。自転車レースイベント開催を機に、サイクル・ツーリズムを観光の目玉として今まで以上に明確に打ち出せます。


point 2 )ホスピタリティの向上

地域住民がサイクリングの観光客を邪魔者扱いしてしまっては台無しです。まちぐるみのホスピタリティ向上なくして「自転車のまち」にはなりえません。

行政や観光業者だけにとどまらず、市民の手ずから自転車イベントを運営して、まちぐるみでサイクル・ツーリズムを楽しむお客様をおもてなしする心を育てます。



「私は市役所職員です。
協議会では職業の枠を超えて
まちづくりに向き合えます。
自転車の魅力に目覚めて
レースにも参戦しています。」
(競技運営担当  高辻貴嘉様)
point 3 )市民の一体感

新幹線開業はたしかに観光の面では非常に喜ばしいことです。しかしながら、人やお金が都市圏に流出してしまうストロー現象の懸念もあります。

協議会では、自転車レースイベントを、市民だれもが参加者・運営スタッフとして関われる「みんなの祭り」にしようと考えました。
スポーツとしても人気があり、3.11以降、エコや利便性の観点からも注目される自転車を使ったレースイベントは、若い人にも共感を呼びます。
イベントを通して市民の一体感を高め、「みんなでふるさとを盛り立てよう」という気持ちにつなげます。







― 初開催となった『温泉ライダーin加賀温泉郷2012片山津』の詳細を教えてください。


2012年5月13日、石川県加賀市片山津温泉で行われました。
白山連峰をのぞむ柴山潟周辺2.4㎞のコースを旋回する3時間耐久レースです。
県内外から予定の500名を大きく上回る約600名が参加。うちママチャリ84名、仮装などのパフォーマンス部門54名でした。




多彩なゲストを招いてのプレイベント
プレイベントでは、BMXパフォーマンス、競輪選手やタレントを招いてのトークショーなどを行いました。
レース前日・当日とも飲食・物販あわせて20店舗以 上のブースが並び、競技者を除くと、両日あわせて延べ2,100名ものお客様にご来場いただきました。
協賛企業も108社と、当初目標を上回るご支援をいただきました。







  2 集客力の高い自転車レースイベントで、リピーター滞在型の観光都市をめざす

― 次に、自転車イベントの内容ですがについて伺います。
    『温泉ライダー』は、なぜ競技種目をエンデューロにしたのですか?


ここは強調したいところなのですが、当初、自転車イベントをレースにするかファンライド(サイクリング)にするかで、協議会メンバーで意見が真っ二つに分かれました。ファンライド、つまり景色を楽しみながらのんびりサイクリングをしたい人のためのイベントにしようという声も根強くありました。
しかし、「温泉めぐりサイクリング」では、競技時間が長くなってしまい、交通規制ができません。いかに眺望や温泉があるとはいえ、自動車が行き交う道路の脇を走るイベントのために、はるばる加賀市までやってくる人がどれだけあるのかと考えたら、ファンライドでは集客性の高いイベントにはなりえないとの結論に達しました。

「集客力のある自転車イベントとは
どんなものかをめぐって、
激論を戦わせました。」
(左:宿泊・記念品・物販担当 稲手彰穂様)
(右:委員 中村 肇伸様)

一方、レースであれば、競技者に『非日常性』を味わってもらえます。
普段は自転車では走行できない自動車道路でのライドは、レースに参戦しなければ味わえません。「そこでなければできない特別な体験」です。
また、レースイベントにすれば、自転車レース愛好者と、飲食店などの商業主の食指が動きます。
自転車レースのファンは全国に数多くいます。その人たちに『温泉ライダー』の良さが伝われば「来年のこの時期も温泉ライダーに参戦する」とスケジューリングしてもらえます。自転車レースファンが、加賀市のリピーターになります。
レースイベントという屋台骨があれば、一定数の集客が見込めます。サイクルショップや飲食店などブース出展のモチベーションが上がり、イベントの付加価値が高まります。
とはいえ参加者のすそ野を広げるためには「レースのついでに温泉や観光も楽しみたい」という競技者にも対応できる、ゆるさも必要です。
加賀市の地形や、近郊で開催されている既存の自転車レースとの差別化、参加者になるべく長くレースを楽しんでいただくことを考慮した結果、競技種目をエンデューロ(周回型耐久レース)に決定しました。

アドバイザーの加賀市在住の競輪選手と、協議会メンバーとでテスト走行を重ね、慎重に決定しました。



  3 競技運営、安全管理や事務局業務は、シロウトだけでは非常に厳しい

  『温泉ライダーin加賀温泉郷2012片山津温泉』の開催にあたって、
     一番苦労したのはどんなところですか。


競技の運営、安全対策、競技者対応の窓口となる事務局業務などの実働部分です
『温泉ライダーin加賀温泉郷2012片山津温泉』は、発案から255日という短期間に、110回もの会合を重ねて開催を実現しました。地元を何とか盛り立てたい!という自転車好きのメンバーが知恵を絞って汗をかいて、振り返らずにダァーッと進んでいきました。
しかしながら、発案から二か月半ほど経過した10月中旬ごろには、スポーツイベント運営の難しさが見えてきました。「素人だけでは立ち行かない」と危機感をつのらせていました。



  具体的に、どのような難しさがあったのですか。

まず『競技運営と安全対策の難しさ』がありました。
レースコースについては、競輪選手にアドバイスをいただいて、協議会内でかなり詳細にプランを詰めることができました。しかし、協議会メンバーには、自転車レースの競技運営のノウハウがなく、レース本番での競技者の動きを予測できませんでした。ピットの設置場所など判断できないことが多々ありました。また、コースの危険箇所にどのような安全対策を施すべきか、レース中の安全管理はどうすればよいのか、十分な対策を立てられませんでした。

二つ目が『事務局業務の難しさ』です。
協議会は、それぞれに生業を持っている社会人の集まりです。何百という参加希望者のエントリーを受け付け、ゼッケンを発送し、電話やメールでの問い合わせに対応するのは、実際問題、不可能です。問い合わせ対応の不備はレース当日の混乱に直結します。いい加減なことはできません。

それともう一つ、
『PRの難しさ』もありました。
北陸新幹線開業を強く意識したイベントであるにもかかわらず、協議会は、東京はじめ新幹線沿線の関東圏に向けての発信力が非常に弱い状況でした。

2011年10月中旬、このような問題を、協議会メンバーが所属しているNPO自転車活用推進研究会に相談したところ、一般社団法人ウィズスポを紹介していただきました。



  4 ウィズスポは共催団体として、経済的リスクも共有してくれた

  ウィズスポを共催団体に選んだ理由を教えてください。

私達が連携先のスポーツイベント運営団体に求めていたものは、
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point 1 十分な安全対策ができること
point 2 事務局業務を任せられること
point 3 関東圏への発信力があること
point 4 運営の収支を圧迫しないこと
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の四つでした。
協議会でもウィズスポさんについて調べさせていただいて、次のことがわかりました。

日本では数少ない、自転車イベントを専門的に手がけている団体
・参加者1万人以上のメガイベントではなく、参加者1000人~5000人の中規模イベントの運営が中心(『温泉ライダー』の規模感に近い)。
・東京を本拠地とする団体(関東圏への情報発信や『温泉ライダー』ブランドの展開性が期待できる)


  これらの点も非常に重要だったのですが、大きな決め手はイベント開催資金のことでした。
ウィズスポさんは、初めてのミーティングで「私たちは、イベント運営の経済的リスクも引き受ける団体です。皆さんから『業務委託』を受けるのではなく、あくまでも皆さんと一緒に主催者の立場にたって、スポーツイベントを運営します」
と言ってくれました。これは、非常にありがたかった。

加賀まれびと交流協議会は、自転車イベントの開催にあたり、石川県・加賀市両行政から多大な人的援助をいただいておりますが、補助金はいただいておりません。お金のことはすべて協議会でやりくりしています。枠にとらわれず自分たちのアイディアで多角的に企画を進められて楽しい、けれど資金面は大変という状況でした。
ウィズスポさんには業務委託ではなく「共催」という形で加わってもらいました。コスト管理の面でもサポートをしてもらいました。



  安全対策について、ウィズスポからどのようなサポートがありましたか。

ウィズスポさんには競技運営マニュアルの作成、コースの安全管理マニュアル・コース設営マップ、警察に提出する道路使用許可申請の書類作成などをお願いしました。

ウィズスポさんが作成したコースマップは「ここにはマットを当てて安全確保します」と危険箇所の写真とマットの写真つきで安全対策を説明してありました
このコースマップは警察でも非常に高い評価を得ました。お陰で、道路使用許可を取ることができました。

『温泉ライダーin加賀温泉郷2012片山津温泉』レース前日・当日とも、大きな事故もなく成功の裡に終わらせることができたのは、ウィズスポの皆さんが、縁の下の力持ちになって、不測の事態に備えてくれていたおかげだと感謝しています。



  事務局運営、資金調達、広報は、だれが、どのように行ったのですか。


「協議会メンバーの頑張りと
ウィズスポさんのサポート、
両方がなければ、大会の
成功はありえませんでした」
(加賀まれびと交流協議会
事務局長 新木洋満様)
『温泉ライダーin加賀温泉郷2012片山津』公式Webサイトの作成と管理は、事務局業務はすべてウィズスポさんにお任せしました。問い合わせ電話番号も、東京のウィズスポの番号です。
在京大手メディアへのプレスリリースをしていただきました。

協議会メンバーは、住民説明、協賛企業探し、チラシ・パンフレットなど印刷物の制作、地元メディアや県内外のイベントでの広報活動、機材やノベルティグッズの手配、会場設営など、職業や特性を活かして分担しました。

イベント全体の作業の取りまとめ、スケジュール管理などはウィズスポの専任スタッフの方にサポートしていただきました。他の開催地での経験やノウハウの豊富な専任スタッフの存在は、心強かったですね。
イベント本番には、予期せぬ出来事がたくさんありました。会場の机が足りない、発電機が一時的に作動しなかった、競技受付の人手不足…。ウィズスポの皆さんに、その都度サポートしていただいて、なんとか乗り切りました。




  5 栃木県でも『温泉ライダー』開催―関東圏の誘客を図る

  初開催の『温泉ライダーin加賀温泉 』の後日談などがあれば、お聞かせください。

関東圏でも『温泉ライダー』が開催されました。
2012年11月17日栃木県さくら市、大会名は『温泉ライダーin SAKURA~日本三大美肌の湯・栃木県きつれがわ温泉~』、参加者900名、競技種目は加賀市と同じエンデューロ(一周5.3㎞、5時間/2時間 自転車耐久レース)です。
「『美肌の湯』をアピールできる自転車イベントをしたいが、いいネーミングはないですか」と、さくら市がウィズスポさんに相談したのがきっかけでした。このつながりは、関東を商圏とするスポーツイベント運営団体の仲介でなければ、できませんでした。

さくら市の大会に、加賀まれびと協議会からも6名参戦しました。次回大会『温泉ライダーin加賀温泉郷2013山代』のPRもさせていただきました。

『温泉ライダーin加賀温泉郷2012片山津』の女子ソロの部で優勝した埼玉県の女性が、さくら市の大会にも参戦し、優勝しました。
『温泉ライダー』の輪が広がれば、温泉ライダーファンの競技者が各地を転戦し、リピーターになってくれると期待しています。



  6 開催プロセスにおいて市民を巻き込み、地域おこしにつながる仕掛け

  『温泉ライダーin加賀温泉郷』の初開催は、地元では、どのような反響がありましたか。

はじめての『温泉ライダーin加賀温泉郷』は、すべてが、想像していたよりもはるかによかった!
参加者アンケートはのきなみ好評価をいただき、地域の皆様、協賛企業からは「来年もぜひやってほしい!」とお褒めの言葉をいただきました。
商工会議所の来年度事業計画にも『温泉ライダーin加賀温泉郷2013山代』が盛り込まれ、地元経済界での認知度も大きく向上しました。

警察からは「ウィズスポの作成した『温泉ライダー』の資料は、これからスポーツイベントを申請する人のお手本になる」という声もいただいております。



  公道封鎖型自転車レースイベントを開催するメリットはなんでしょうか。

公道封鎖型自転車レースは、仕掛ける側が、地域のことをよく知るきっかけになります。
レースコースを設定するには、地元の理解が必要です。地域の人とつながりを持ち、根回しした経験は、やった人の財産になる。次に何か別の事業を興すときに必ず役立ちます。

ただ、これは非常に足のかかる取り組みです。地元の調整に加えて、大会運営の作業も重なってくると、絶対にできない。
効率的にやるためには、大会運営はウィズスポさんにお任せして、こちらはウィズスポさんのできないことを汗かいてやる。この役割分担と信頼関係がなくては、絶対にできません。



  最後に、読者の皆様へのアドバイスをお願いします。

やると非常に発信効果が高いのが、スポーツイベントです。定期開催していけば集客が増えてくると思いますが、参加者目線を忘れないでください。 これは、ウィズポさんとも常に確認し合っていることですが、「はじめにイベントありき」になってはならない。どうすればイベントを形にできるかを優先させてしまっては、楽しいイベントにはなりません。
開催のプロセスを通じて、まちがひとつになるしくみを作れば、どこでも楽しいイベントになります。
イベント趣旨をなかなか理解してもらえず、大変なときもあるかもしれません。それでも焦らず、姿勢を変えず、努力を続けてほしいです。




加賀まれびと交流協議会の皆様、
本日はお忙しい中、
貴重なお話をありがとうございまた!


※ 加賀まれびと交流協議会の公式WEBサイト
※ 取材日時 2012年12月
※ 取材制作:カスタマワイズ
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